金色の師弟

掴み所がなく、何を考えているかわからない人であったが、ルイを守ってくれたのは事実である。

『……貴方に手を出したら、アデルはどれ程怒るんでしょうかね?試します?』

平然とそんなことばかりを口にされたため、あまり素直には感謝出来ずにいる。

ジョシュアはルイを連れて王都へ近づくと、町には入らず外れの森の中へとずかずか進んでいく。
そして彼は、一つの正方形の白い石の前で足を止める。
それは、誰かの墓のように見えた。
ルイは石に顔を近付け、石に名前が掘られていることに気付く。

『アイリス・ヤーデ……?』

『アデルの母君ですよ』

アデルの母。
その単語に妙に緊張し身体を堅くしたルイの目の前で。

『さて、と』

躊躇うことなく、ジョシュアはその石を退けた。
ごとん、と倒れる墓石。
ルイは叫び声をあげてジョシュアを非難しようとしたが、言葉にならない声がぱくぱくと動く口から漏れるだけであった。
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