金色の師弟

抜け道の出口である調理場に出たとき、丁度屋敷の留守を任されていたルークが掃除をしているところであった。
いきなりの珍入者にルークは剣を抜こうとしたが、それがジョシュアとルイだと気付くと慌てて駆け寄ってきたのだ。
そして今、椅子と机のみの客間でアデルを待っているところである。

「あの、ジョシュアさん」

「何かな?」

椅子に座っていたルイは、壁に寄り掛かるジョシュアを見上げた。
今まで言えなかった感謝の意も、落ち着いた今ならすんなり言える。

「ここまで連れてきてくださって、本当にありがとうございます」

座ったまま深々と頭を下げるルイに、ジョシュアは面食らっていた。
ジョシュアにはジョシュアの考えがあり、ルイを連れてきただけのこと。
感謝されるようなことはしていないのだ。

「……その素直さを、アデルは愛したんでしょうね」

ぼそりと呟き、ジョシュアは壁から身体を離す。
そして、椅子へと腰掛けるルイに、ゆっくりと近づいていった。
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