金色の師弟

食事を終えた頃には、もう夜も遅くなっていた。

「広さはあるからな。泊まっていけ」

家主の許可をへて、二人は無事に今夜の宿を得たのである。
ジョシュアは元から泊まるつもりでやってきたのであったが。
そして、無事に宿を得たのはジョシュアだけだったのかもしれない。

ルイは今、緊張した面持ちでとある一室の扉に寄り添って立っている。
泊まれ、と言ってアデルは当たり前のようにルイを自室へと連れてきた。
一方、連れてこられたルイは初めて入るアデルの部屋に緊張していた。

一人では大きいベッドのシーツにはしわがなく、余分なもののないこざっぱりとした部屋であった。
アデルの性格から、汚れた部屋は想像出来なかったのだが。
目立つのは、天井に届く高い本棚が三つあり、どの本棚にもぎっしりと本が詰まっていたこと。

背表紙に軽く流し見たところ、用兵学や戦術戦略、時には経済学など学問に関する書物で満たされていた。

(全部、読んだのかしら……)

アデルの才能は、努力なしに得られたものでないことを物語っていた。
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