金色の師弟

「単純な数の話をしようか。この戦争は、極端な話ではエルク様の首一つで終わらせることが出来る」

「それは……!」

声の調子を変えずにあっさりと口にしたアデルに、ルイは目を見開き彼を見上げた。
アデルは哀しげな笑みを浮かべ、ルイの金糸の髪を優しく梳く。

「エルク様はこの戦争を指揮している。あの方が亡くなれば反戦派と一般市民が力を増し、自然と終戦へ話は傾くだろう。これなら、犠牲となる首は一つ。しかも、戦争の責任者の首だ」

ルイはどう反応をすべきかわからず、黙ってアデルの金の瞳を下から覗き込んだ。
静かで穏やかな瞳は、ルイではないどこかを見つめている。

「もう一つ方法がある。それがさっき言った騎士団長たちの首だ。そして、エルク様は彼らに唆されていたと公表すればいい。王位は剥奪されるかもしれないが、これならエルク様は生き残ることが出来る。だが、こちらのほうが犠牲となる人は多い」

唆した張本人の騎士団長、そしてそれを止められなかった大臣たちに責任が求められる。
一人の命と、数名の命。
天秤に掛けたとき、アデルは迷わない。

「俺は、エルク様が生き残る道を選ぶ」
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