金色の師弟

「……いえ、違いますね。私たちに協力してください、アデルさん」

アデルは、ルイから目を逸らすことが出来なかった。
真っ直ぐに見つめるルイの視線は、言葉よりも彼女の気持ち表している。
不安に揺れながらも、決して逸らすことがない。
きっとルイは、アデルの言葉では退かないだろう。

それでも、ここでルイの申し出に頷けば、彼女を危険に晒す事となる。
簡単には、決断出来なかった。

「……俺には怖いことが二つある」

「え?」

ルイを説得するための言葉を考えることは止める。
ただ思うことを、素直に口にすればいい。
それでも、ルイがアデルの気持ちをわかって、退いてくれるかはわからない。
素直な気持ちをぶつけてもルイが共に戦うことを選んでくれるなら、アデルは……。


「エルク様を失うことと、お前を失うこと。俺が恐怖だと思うのは、この二つだけだ」

アデルはゆっくりとルイの背中から腕を退くと、両手でルイの頬を包み込む。
いとおしげにルイの目元を親指で撫で、目を閉じて自分の額をルイの額へとくっつけた。
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