金色の師弟

雷を怖がり抱き付いてくるアデルを可愛いと思うのは不謹慎だろうか。
だが、素直に弱さを見せてくれたことには、どうしても喜んでしまう。

「……アデルさんにも苦手なものがあるんですね」

完全無欠だと思っていたから、余計に頼られたことが嬉しくなる。
当たり前だと唸った後に、アデルは擦れた声で囁いた。

「母親が死んだ時が、今のような雷雨の夜だったんだ」

アデルの言葉に、ルイは喉を握り潰された気分だった。
頼られたことを喜ぶ自分の短絡的な思考が、情けない。

それでも、どうしようもなく嬉しいのだ。
強がりなアデルが見せた弱さに触れるたびに、彼の心に近づくようで。

「それからは……雷が鳴るたびに身体が震える。十年近く経ったというのにな……」

大切な人の死の痛みが、雷を引き金に蘇る。
今のアデルの痛みを、ルイは完全でなくても感じることが出来た。
ルイも本当の親のように慕っていた人を、失った記憶があるのだから。
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