金色の師弟

「……ノルン様には戦場になど、行かないでほしいと強く思うのです」

それが、平民であるタクトの精一杯の告白であったことに、ノルンは気付けなかった。
気付けなかったが、心は揺れた。
心配してもらえたことが、これ以上無く嬉しかったのだ。

そしてノルンは、先程消え掛けた反乱の意志に、再び薪をくべようとする。

「……タクト」

「はい」

ノルンは、離れた距離を埋めるために一歩前に進んだ。
いつ、王都にも混乱が伝染するかわからない。
そして目の前のタクトに、どのような被害が及ぶかも想像できなかった。

わかっていることは、このままではシェーダ国は傾き、崩れ、民は惑い混乱がシェーダを支配する。
そんな未来を、愛する人の目の前に突き付けることはしたくなかった。
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