金色の師弟

彼が人質に取られないためには、ノルンが守るしかない。

「タクト、私、貴方が好きなの」

え、と漏れたタクトの声は純粋な驚きによるものだった。
ノルンは震える指を背中に隠し、拳に力を籠めると、真っ直ぐに彼を見上げて声を潜めた。

「貴方の気持ちがどうかはわからないわ。でも、私は貴方が好き。好きなの。だから、だからね……」

胸の中に、申し訳ない気持ちが満ちる。
勝手にノルンが好きになったせいで、タクトは厄介ごとに巻き込まれる羽目になった。
迷惑を掛けるだけの恋心。
そう思っていたノルンの視界で、タクトの顔がくしゃりと笑う。

「本当……ですか?」

喜びを理性で抑えつけた声。
震える腕が、花束を落とさないように抱え直す。
タクトの身体は、歓喜に震えていた。
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