金色の師弟

「イアン様、村が……!」

山中にある村が見えてきたとき、先頭を歩いていたディンが緊迫した声を上げた
悲鳴と叫び声の混ざった騒めきがイアンの耳に届き、彼はディンへ駆け寄った。
高台から村を見下ろす形になり、イアンは絶句する。

「そんな……!」

「賊ではないようです」

眼下に広がっていたのは、農具を持った村人が同じ村人を襲っている地獄のような光景であった。
数名の男が鎌や鍬を振り回し、近くの家から食料等を強奪している。

「イアン様、ご命令を。すぐに鎮圧に向かいます」

隣に並んだ近衛兵団長の言葉に頷くと、イアンは後ろを振り返り声を張り上げた。

「第三小隊、村へ先行し騒ぎを鎮めよ!」

「はっ!」

歩兵中心で、近衛兵の中でもっとも身軽なディンの小隊へ命令を飛ばす。
ディン含め隊員は短く返事をし斜面を駆け下りた。

「第一小隊、続くぞ!第五、第七小隊はイアン様の傍に残れ!」

「了解!」

団長に従い騎兵中心の第一小隊が山道に沿って村へと急行する。

「……このままでは危険だ」

村を見下ろし苦々しく呟くライラの言葉に耳を痛めながら、イアンも村へと馬を走らせた。
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