金色の師弟
「旅の御方にするようなお礼も出せませんが……」
男はイアンたちをメルディ軍ではなく、旅の傭兵団だと思い込んでいた。
それも、シェーダ進軍前にわざわざ皆の服装を質素で統一感のないものに変えたおかげだ。
「構いません。僕たちは見返りを求めて助けたわけではありませんから」
「そうですか……しかし……」
「どうしてもお礼をしてくださるのなら、いくつかお話をさせてください」
話?と男が首を傾げるのに合わせ、イアンはゆっくりと頷いた。
「この国の現状を知りたいのです」
男は何度かまばたきを繰り返した後、静かに頷いた。
「わかりました。……ですが、今の私には多くを喋る気力はありません」
「はい。ですから、貴方はゆっくりと休んでください。目を覚ましたら、お話を伺います」
男はそっと微笑んで、深く息を吐きながら目を閉じた。
イアンは恐る恐る男の手首に触れ、脈の動きを確認して肩の力を抜いた。