環七あやめの遊戯
-人ってきっと、見るもの触れる物に、何か意味付けせざるを得ない動物なんだ。

だから、俺の場合だったら、このビニール傘を今後見る度に、ラーメン屋を必死になって雨の中歩き回った事を思い出すだろうし。

もっと言えば、『ビニール傘』→『ラーメン屋を探した思い出』の様に、ビニール傘であればどんなビニール傘でもその思い出を呼び出せる。

一旦見てしまえば、二度目に見た時、同類の物であればそれは、その物に対して以前刻み込んだ『思い出』を呼び覚ます『スイッチ』になる…-

この大発見は、あやめにとっては大いにウケた。
何せ、見るもの全てが、あやめにとって、良いも悪いも、いろんな思い出をよみがえらせてくれるのだから。

今まで適当にあしらっていた物が、よくよく見ると、ただの宙に舞う埃でさえ、

-家で年末大掃除した時、埃まみれのタンスの裏から、無くしたはずの限定テレカ見つかった…-

と言った具合に、ひどく喜んだ記憶と結びつける事が出来るのだ。
< 7 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop