☆消えてしまったわたしの赤ちゃん☆14歳の妊娠・・・ ~セックスを軽く考えないで~
「先生、こんにちは。」


院長は振り返った。


「あら、あなた、あのときの・・・。」


院長はわたしを見るなり、そう言った。


「もしかして、覚えていてくれたんですか・・・?」


わたしはたずねた。


「ええ。」


院長はうなずいた。


「望月由衣さんの初診の際に、付き添いの女の子が二人いたことを覚えていて、何となくあなたの顔も覚えていたのですよ。」


「そうですか。」


「もう知っていると思いますけど、望月さんは元気な赤ちゃんを出産しましたよ。」


「はい。新学期が始まる前に、友達と一緒に、赤ちゃんに会いに行きました。」


「そうでしたか。望月さんは赤ちゃんと初めて対面したとき、本当に幸せそうでしたよ。」


院長の目には、優しさが溢れていた。


産婦人科医として、赤ちゃんとお母さんを、心から支えてあげたいと願う気持ちが満ちている。


しかし同時に、わたしは彼女の中に、自分と共通するある何かを感じ取っていた。



「あの・・・、一つお伺いしてもいいですか?」


わたしはどうしても、たずねずにはいられなかった。


「はい、もちろんいいですよ。」


院長は答えた。


「あの・・・、先生はどうして、産婦人科のお医者さんになったんですか?」


ほんの一瞬、院長の顔に、寂しさとも、悲しさとも取れる表情が浮かんだような気がした。


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