HERO
火葬場の待合室に移る大人たちの後ろに着いて歩く私は、隣に梓がいないことに気づいた。
火葬炉の前にひとり立ち尽くす梓を見ると、溢れんばかりの涙を浮かべ、拳を強く握りしめていた。
その時横に立って、いつの間にか二人の背丈が逆転していることに気づいたのを覚えている。
苦しい時、さみしい時、困っている時、辛い時、怖い時。
言葉にすることを知らない梓はそれを堪えるように服の裾をぐしゃぐしゃとする。
本人はそのことに気づいていないようだったが施設にいる人は皆知っていることだ。
そしてそれは、私への暗黙の合図でもあった。