HERO
「大丈夫。何かあったら守ってあげる」
昔、口癖のように言っていた台詞は躊躇いを忘れ流れるようにすっと出てきた。
目が合って、私たちは声を漏らして笑い合う。
さっきまで感じていた距離も、空白の時間も、なくなったかのように。
しかしそれも束の間、穏やかな空気の流れは、研究室の戸が開いたことにより止められる。
「おーい」
知らない女の人が扉から頭を出してこちらを覗いている。
「朱莉!?」
「電気ついてたから消し忘れかと思った。まだいたんだ」
梓が朱莉と呼ぶその人は、梓にさっと寄りそうと、漸く私の存在に気付いたようだった。