HERO
この季節、いつもなら深い藍色の空が、今日は縹色に見える。
真っ白な地面が、空に反射しているせいだろう。
凍てつくような冷たい空気も、どこか澄んでいるように感じた。
つい、先程までは。
染めたばかりの薄茶の髪が、寒さから頬を守ってくれている。
このままでは、つま先は愚か、指先の感覚まで失ってしまいそうだ。
遅い、遅すぎる。
かれこれ何時間待っているだろう。
私は今、大学生でもないのに、大学の前に立っている。
目の前を通り過ぎて行く殆どは、恋人たちである。
そしてその恋人たちが通り過ぎて行くたび私は思うのだ。
今私は、この人たちの目に惨憺たる姿に映っているのだろうと。
今日は、2012年、12月25日。
クリスマスである。