HERO
「おい!」
そうか、そうだったんだ。
「なんで?言っちゃだめだった?」
私は何を期待していたのだろう。
それもそうだ。
梓が大学に入ってもう3年も経とうとしているのに。
いや、気付かなかったわけではない。
どこかでそんな予想を否定していただけだ。
それを、今更。
「衣奈ちゃん?大丈夫?」
「そっか。なんだ!そうなんだ」
視点をどこに合わせればいいのかわからない。
目を泳がせたまま、口だけが機械のように勝手に動いている。
「よかった。彼女が出来たんだ。あ!ほら、私ずっと心配してて。梓って昔っから弱虫で、泣き虫だったし。ほら、こんなに細くて、全然男らしくないし」