HERO
「なんか、羨ましいな。私は、そんな梓見たことないから。でも、例え今、梓が弱虫だったとしても、私はきっと梓を好きになってたな。どんな梓でも、受け入れる覚悟は出来てるつもりなの」
ずっと言いたかった言葉を朱莉にすべて奪われてしまった。
照れているのか背を向ける梓に、愛おしそうに視線を向け、穏やかな笑みで見つめる。
恥じらいもなく、梓の前でさらりと言われてしまった今、私は挽回する術が見当たらず黙り込んだ。
「ごめん。もう少し静かにしてくれないかな」
梓は素っ気なくモニターを見つめ、溜息をついた。
「はいはいごめんごめん」
黒いストレートの長い髪を揺らし、定位置のように朱莉は梓の隣へと戻る。