HERO



「もしもし?うん終わった。今から行くね」






そう言ってまた一人、恋人であろう相手に電話をしている女が声を弾ませ目の前を通り過ぎて行く。



私の目的の相手はというと、電話にすら出ない状態だ。





何度鳴らしても、通じた先の相手はいつも一定の音で同じ台詞を繰り返す。





「おかけになった電話は、電源が入っていないため…」





もう諦めている。


きっと彼はまた、夢中になっているのだ。




私の事など忘れて、大好きな研究とやらに。







< 3 / 86 >

この作品をシェア

pagetop