HERO
「はぁーよかったー。やっと見つけた。もう、驚いたよ」
何もない部屋の窓辺に立つ梓の背に歩み寄る。
「勝手にいなくなるんだもん。ねえ、なんかここ、別の大学みたいだね。こんな綺麗な階もあるんだね」
私が話しかけているのに、梓はぴくりとも動かず、窓の外を眺めている。
「目が覚めたら誰もいないし、別の部屋に来てるし。夢の中にいるのかと思っちゃった。私昨日あれから眠っちゃった―」
「……」
「ねえちょっと聞いてる?」
肩に触れて初めて、梓がこちらに視線を向ける。
しかし、あっけらかんとしたその顔が嫌に不自然で、思わず眉を顰めた。