HERO
「梓?」
目を開いたまま、口も開いたまま、一ミリとも動かない。
その時、背後にある扉がぎいっと鈍い音を立てて開く。
振り返った先に立っていたのは、つい先ほどモニターで見た金髪の少年だ。
「あなた、さっきの―」
ゆっくりと距離を縮めて私の前に立った少年は、左手の腕時計を私に見せるように腕を上げた後、もう一方の手で、時計に触れた。
「―ロボット」
動きを止めていた梓は何事もなかったようにまた動き始め、私はその声に驚き肩を震わせた。
「今。なんて…?」
「守田衣奈さん。はじめまして。平(たいら)と言います」
「どうして私の名前―」
「おっと。そんなに怖い顔しないで」
威嚇する私に対し平は微笑んで見せた。
「驚くのも無理ありません。少し、お話ししましょう」
平はそう言うと梓の隣に立ち、梓の背に手を置いた。