HERO
× × × ×
無我夢中で部屋から飛び出したことは間違いだったのか。
走る私の目に飛び込んでくる景色に気を取られ、数分もせずに足を止めた。
見たこともない看板や建物。
昨夜あれだけ地面を埋め尽くしていた雪は、跡形もなく消えている。
見覚えのある道。
普段なら学生で賑わう通りのはずも、そこには人一人としていない。
混乱した脳内を落ち着かせようとしていた。
周辺をくまなく見て回る。
「あ…」
息も疎らに見つけた建物の前まで歩いていく。
なんだ。やっぱり何もおかしくなんてないじゃないか。
勤めているバイト先の店。
看板も、その造りも変わらないように見える。