HERO


「ごめん!!」



「……。」



1時間後、漸く私の前に現れた幼馴染の梓は、何度も同じ言葉を繰り返し頭を下げた。




「全然、大丈夫だよ」




こんな時、自分の強情さに腹が立つ。



結局、待ち望んでいたはずの再会は



「もういいから」





私のそんな可愛げのない、愛想のない一言で始まった。





私が今日大学に来たのには理由がある。



幼馴染の瀬能 梓(せのう あずさ)に研究に協力してほしいと頼まれたのだ。




大学とは無縁のフリーターの私には難しすぎるその研究内容に、ろくに耳を傾けることもしないまま




少し前よりも大人の面影を持つ彼の隣を颯爽と過ぎ、早足で数歩前を歩いた。





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