HERO
「嘘よ」
目に入る文字に見覚えはあっても、そこには記憶と違う西暦が刻まれている。
「立ってください」
地面に座り込んだ私の腕を梓はまた引く。
「離して!!」
「出来ません」
「離してってば!!」
私はこんなに泣き虫だっただろうか。
鼻の奥がつんとした痛みが走る。
下手に動けば、骨の一本でも簡単に折れてしまいそうだ。
強引に、容赦なく腕を引かれる。
どんなに抵抗しようとも、梓は手を放そうとしない。
どんなに弱弱しく訴えようとも、その表情は一定のまま、何も変わらない。