HERO
例えばここが本当に2055年だったとして、私はなぜ2055年にいるのだろう。
そしてなぜ、梓はロボットとして存在しているのか。
本物の梓は、2055年でいうと64歳。
健在であればまだこの世に存在しているはずだ。
「今はまだお教えできません」
あの少年は確かそんな風に言っていた。
『今はまだ―』ということは、梓は生きているということだろう。
私は。
私はいるのだろうか。
存在しているとすれば、62歳。
未来の私に会えば、梓に会えば、何かわかるだろうか。
漸く息も落ち着き、人気の少ない公園のベンチに腰を下ろした。