HERO
シワの多い手で軽快にタブレットを弾きながら、お爺さんは面倒そうに溜息をついた。
画面内に表示されている見覚えのある物に、つい夢中になって覗きこんでしまう。
「新聞…」
「え?ああ、そうだよ。若いのに新聞に興味があるのかい?」
お爺さんは端末を私に差し出し、寒さから手を守るようにコートのポケットに手を突っ込み、白い息を滲ませた。
すかさずその日付を確認して、溜息を零した後、メインの頁に映った写真を見て一驚した。
「…この子」
「平がどうかしたのかい?」
そこにはついさっきまで私と話をしていたあの少年の後ろ姿が映し出されていた。