HERO


赤くなった指先は痺れているように響く。


そんな手のぬくもりを取り戻す間もなく梓は研究とやらを始めた。


もっと謝ってくると思ったのに。

そうすれば、私だって。





埃臭い小さな研究室に詰め込まれたパソコンや幾つかの大きなモニター。


少し古臭い小さなストーブの前に立つと、冷え切った頬はじんわりと鈍い感覚を覚えた。



「そこに座って」と促され、私は二つ返事でモニター前に置かれた角ばった1人がけのソファーに腰かける。




梓は私の顔や手足に幾つものシールらしきものを貼り付けてゆく。




なされるがまま実験台になるその姿が、目の前のガラス張りの壁に薄ら映えて見えた。


温かい指先が僅かに頬に触れる度、肩に力が入る。




「よし、じゃぁ始めるけど…動いても、食べても寝ても、なんでもいいや。多分、一時間くらいで終わると思うから暇つぶして」






梓はそう言うと目の前に座りキーボードをリズムよくタイプしていく。










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