HERO
「さてと、ここでいいかな」
壁に沿って並べられた巨大な本棚が、ぐるっと一周して円形に並べられている。
そしてまた、その本棚に沿うように、手前側にはミラーで覆われた幾つもの箱形のブースが円形に並んでいる。
お爺さんはひとつのブースの前に立つと、その戸に手を伸ばした。
「図書館、ですか?」
きょとんとした私にお爺さんはイエスともノーともとれるような曖昧な相槌を打つ。
「さあ、私は温かい紅茶を持ってくるよ。君も同じものでいいかな?」
「はい。ありがとうございます」
戸を開けて私を中に促すと、紅茶を取りに行ったのだろう。
お爺さんは一人歩いて行ってしまった。