HERO
「わかりました」
今度は私がロボットの後ろを歩いている。
吹く風は冷たいが、その分日差しが暖かく、心地よい。
真冬の寒さと呼ぶには、少し暑いくらいである。
目の前を歩くロボットをまじまじと見て、本当にそっくりだと感心していた。
見た目は勿論のこと、歩き方や、時折見せる仕草は、梓そのものだ。
けれど、あの『合図』らしき仕草は一度も見当たらない。
髪の細さや、その質感も、少し伸びた襟足も、無愛想な横顔も。
これがすべて造り物だとは本当に感心する。
ただ、ずっと見ていて気付いたことがある。
それは、耳についた赤い小さなピアスだ。
髪が耳にかかっていたせいで今まで気付かなかったが、確かに耳にピアスを着けている。
「ピアス、着けてたっけ」