HERO
独り言として発せられたその声はとても小さく、風に紛れ声として露になったかも定かではない程とても小さなものだった。
けれど目の前のロボットはすぐさまそれに反応して振り返る。
「このピアスは、平に造られたヒューマノイドロボットすべてに着けられています。ロゴのようなものです」
「へえ」
くるりと振り返り進んでいく梓の背を見つめる。
「喋らなかったら、本物みたいなのに」
「喋ってはいけませんか?」
2メートルは離れた場所からまたロボットは返事をする。
「なんでもない!独り言に一々返事しないでよ」
「独り言には、答えません。わかりました」
声までもが梓そのものであるのに、喋り方は機械的でなんだかぎこちない。
「ほらはやく、行こう」
ロボットの癖に、手にはぬくもりがある。
それが人としてのぬくもりでなく電子的なものであると理解した途端、胸の真ん中が、ぎゅっと潰されたように、酷く痛かった。