HERO
それからの私はというと、まるで何かに目覚めたかのように梓を守ることだけで頭がいっぱいだった。
弱腰で何も言い返すことのできない梓に代わって、上級生を何度睨み、見上げたことか。
時には自分よりも体格のいい男子からの喧嘩を買って、傷痕は増えていくばかりで。
下校後、毎回のように傷のある顔と汚れた制服を見て、いつも施設の先生に怒られた。
「もっと女の子らしくなさい」
先生のその口癖は私が作ったようなものだ。
可愛いリボンや、ふわふわのスカートに見向きもしなかった。
ちょうどその頃、施設のお父さんと慕われていた小林さんが亡くなった時のことである。
梓を面倒に思ってか、外方を向いていった他の先生とは違って、小林さんだけはどんなに反抗され、無視されても決して梓に関わることをやめなかった。
結局、梓は最後の最期まで心を許すことはなかったのだが。
当時私が小学4年生になる前であった。