Lovers
「6月、初めて……ナナだけを飲みに誘った前の日別れてたんだ」

「え……」

「抑えきれなくて。ナナへの自分の気持ち」


あの時?

もうずいぶん前のあの時から?


「嘘よ!だって、何もなかったじゃない……。二人で飲みに行ってもおかしいくらい何も」

「怖かった」

「それに、彼女と別れたって聞いたのだって昨日のことよ?」

「『友達』という関係がくずれて、ナナとの関係がぎくしゃくすることが……怖かった。だから、ずっと俺に彼女がいる方がナナが安心すると思って」


そんな……。

私だってずっとそんな思いで、もう半年以上も『友達のフリ』をしてきたのに。


「だけど、限界を超えた。ナナへの気持ちに。だから彼女と別れたこと言った。それから……、俺の本当の気持ちも伝えたかったのにやっぱり俺はへなちょこで、昨日結局言えなかった」

「うそ……」

「ナナを昨日抱いて、もう抑えられなくなった」

「……」

「友達である以上、いつか他の男のものになるナナを……俺は我慢できない。ナナを俺だけのものにしたいんだ」

「ハヤト……」

「俺を好きなれよ。……ナナ」


鈍感な女と鈍感な男。

最初に『友達』という言葉を口にしてしまったのはどちらなんだろう。

そのしがらみで、ずっと鈍感なままだった私たち。

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