Together~キミと一緒に~
走って俺たちの前から去って行く彼女。
俺も、泣きたいよ。
でも、神野先輩も複雑な顔をしていた。
それに、あの言葉が気になるんだよ。
「先輩、さっきの言葉って」
『俺、部活行くわ。』
「待ってくださいよ!」
『裕樹』
「・・・・・・」
『俺のことを嫌いになれ』
神野先輩のその一言で俺の心が凍りついた。
神野先輩の表情はとても悲しいものだった。
なんで、俺に「嫌いになれ」なんて言うんだ。
俺は、神野先輩のことを憧れていたのに。
どうして、なんで、俺・・・
「先輩は本当にそんなこと思ってますか!?」
『当たり前。俺、野球以外に興味ない。だから、お前も、いらないから。』
一人で先に部活へ向かう神野先輩の背中を見ながら俺は一粒の涙を流した。
誰だって、好きな先輩に「嫌いになれ」って言われると涙が出るもんなんだな。
それは男であっても、女であっても関係ないってことか。
その後の部活には身が入らなかった。
神野先輩のこともうまく見れなかった。
どう接していいのかも、声をかけていいのかもわからなかった。
それからの日々だって同じことだった。
時々、廊下でまた同じような光景を見たりもした。
決まって女子は泣いて、泣いて、泣いて。
本当にあの人は野球以外のことを何も考えていな。
そして、いつからか俺は神野仁という人間を嫌いになっていた。