Together~キミと一緒に~
「もう俺に関わんな」
仁が私の前を通り、去って行く。
でも、私はそんな仁の腕をすぐに掴んだ。
「っは?なに」
「どうしてそんなに壁を作りたがるの?」
不思議だった。
涙は一粒も出なかった。
仁のことを知りたいって思った。
だから、私はこうやって仁に何か言うことが怖くなかった。
このまま、仁が私の前からいなくなることの方がずっと怖かったから。
「壁って、別にそんなもん作ってるつもりはない。」
「どうして人間を嫌うの?」
「そんなんじゃねぇって。」
「どうして、何も言わないの?」
「言ってんじゃん、野球以外に何もいらないって。」
「それはウソ。」
「ウソじゃない。」
「ウソ。」
「違う。」
「ウソ。」
「うっせぇな!」
仁の目が、悲しい色をしていた。
いつものあの輝いた笑顔もなければ、きれいな目も今は曇っていた。
それでも、仁は優しいよ。
だって、私の手を振り払わないでしょ?
嫌なら、すぐに振り払ってくれると思った。
それなら、私はもう仁に関わらないようにしようって思ったかもしれない。
でも、違ったから。
だから私はこれからも仁を信じようって思ったの。
「俺には野球しかいらない。女とか、ダチとか必要ないだろ。」
「どうしてそう思うの?」
「めんどくさいだけだろ。近くにいてウザいだけだろ。」
「そうかな。温かくて気持ちが落ち着いていいと思うよ?」