Together~キミと一緒に~
この人が「神崎」って言ったのは初めて聞いた。
それに、なんてタイミングのいい人なの!
「裕樹!」
「おい!バカ!」
「え?」
周りを見ると、私と裕樹を交互に見る人がたくさんいた。
それもそうですよね。
いつも呼んでる側としてはなんら問題はないわけですけど、傍からしてみれば呼び捨てで名前を呼ぶのは・・・そういう関係に見える。
「あ、えっと、下野くん。なんでここに?部活のこと?」
部活、という言葉を少し声を張って言ってみた。
すると、どこからか「あ、そっか」っていう声が聞こえてきた。
少しずつ周りの空気が緩和されていった。
「いや、あのさ。神野先輩が神崎が何か忘れたっぽいから聞きに行けって。」
「あ、あの人お節介ね。」
「まぁ、そういう人じゃん。で、何忘れた?」
「筆ば、こ。」
「なるほど。書くものがないってか。」
「はい・・・。貸していただけますか?」
「了解。ちょっと待っとけ。」
やっぱり運は味方してくれてた。
最近私頑張ってるもんね。
はぁ、マネジ頑張っててよかった!
と、いうか部活入っててよかった!
急いで取りに行ってくれた裕樹は「放課後に返してくれたらいい」って言ってくれた。
「ありがとう!ほんとに助かる。じゃぁ、また部活で!」
「おう。」
やっぱりここでも、部活、を強調して言ってみた。
その甲斐あってか、裕樹がクラスに帰ってからも誰からも質問を受けることはなかった。
その後、授業では裕樹に借りたシャーペンとなんとおまけで消しゴムも貸してもらえたのでしっかりと授業が受けられた。
あっという間に放課後を迎えて、鞄を持ちながら一息つく私。