Together~キミと一緒に~
まさか、尾崎先輩が投げれないなんて誰も想像していなかった。
それから、代わりのピッチャーが仁であることも。
マネジも知らなかった事実なんだから。
「仁、俺の代わりできなかったらできないって言ってもいいぞー。」
「全然余裕でできるし。」
「だろうな。こっそり練習してるお前を見てて思うよ。」
「なっ!」
こっそり練習?
もしかして、仁ってこのことに気がついててピッチの練習をしてたの!?
「なぁ、下野。お前がかいたスコアが物語ってたぞ。」
「・・・すんません。」
「裕樹、お前俺のスコアはちゃんと隠しとけって言ったろ!」
「そんなこと言われましたっけ?」
仁と裕樹が陰で動いてたんだ。
あ、そっか。
スコア、って朝私が抱いてたあの感覚はこれだったんだ。
仁のスコアに書き込まれた球の数。
でもそれはバッティングの球数じゃなかった。
ピッチング練習の球数だったんだ。
なるほど、ね。
「で、仁はいつから俺が甲子園で投げれないって気づいてたんだ。」
尾崎先輩が仁の方を向いて質問をした。
すると仁は、裕樹とじゃれあうのをやめて口を開いた。
「隆也がそこの岡本と話してるのがコソッと風に乗って届いた。」
「それは盗み聞きってやつか?」
「おう、それだな。」
岡本先輩を見ると、下を向いたまま何も言わなかった。
岡本先輩はずっと前からこのことを知ってたんだ。
一人で抱え込んでたってことだよね。
先輩はどんな気持ちでいたんだろう・・・。
「まぁ、それで隆也の力になれたらな、なんて思って裕樹に投球のアシスト頼んだ。」