Together~キミと一緒に~
「茜里、私怒ってないから。茜里の仕事なんだから、怒る理由なんてないでしょ?」
「でも、弥生は本当はベンチに行きたいんでしょ・・・。」
この時初めて佐藤先輩が弥生、と言ったのを聞いた。
それに驚いたのは私だけじゃなかったみたいだけど。
「・・・行きたくないよ。だからいいの。」
「弥生はいつもそうやって我慢する!」
「してない。甲子園に行けないわけじゃないんだから。嬉しいよ?我慢してないよ?」
「・・・ほんとに?」
「うん。本当に。茜里、いってきな。」
少しだけ微笑んで言う岡本先輩がとても大人っぽく見えた。
そして、佐藤先輩はそんな岡本先輩を見て「うん」とつぶやいた。
あれから1週間。
ついにこの日が来た。
あの日からみんなは更に一生懸命練習に取り組んだ。
仁は裕樹とキャッチボールをしてるところをよく見かけた。
その後は、バッテリーでの練習。
時々尾崎先輩がアドバイスをしに行ってるところも見かけた。
バッティング練習では各自で苦手なところ得意なところを確認し、お互いに情報を交換していた。
この1週間でみんなはまた成長した。
この甲子園球場で、どんな試合が見れるのか。
私と岡本先輩はスタンドから応援団たちと一緒に見守っていた。
まだ試合は始まっていない。
相手チームもうちのチームもキャッチボールを始めた。
今日の対戦相手のチームは、おととしの優勝校。
これは、かなり厳しい試合になりそう。
今からドキドキが止まらない私を見て「大丈夫?」と声をかけてくれる岡本先輩。
「まだ試合は始まってないのに、心臓が飛び出そうです・・・。」
「そうね。私も甲子園に来たのは初めてだし、相手チームが優勝経験があるって思うと緊張する。」