私と君と、あの子。
 観覧車に乗り込むと、私と亮太は、向かい合わせに座った。

 観覧車から見える景色が綺麗で、私は窓の外ばかりを見ていた。


「なあ、優衣?」

「ん?なに?」

「優衣はさ、中学の時、好きなやつとかいなかったの?」

「え?」


 真剣な顔でいきなりそんなことを話し出す亮太。

 私はどう答えていいか分からなかった。

 亮太って言って、いいのかな。亮太には麻美ちゃんがいるのに・・・。


「いたよ?」


 私がそう答えた途端、亮太の目が少し見開いた。

 さすがに亮太とは言えなくて、いたということだけを言った。


「俺もいたよ。」


 亮太が少し微笑んでそう言うから、私は少しドキッとしてしまった。

 誰なのかは気になったけど、あえて聞かなかった。

 他の人の名前が出て、傷つくのが嫌だから。


「そいつさ、天然でさ、俺がどんだけアピールとかしても気づかないんだよ。」

「・・・そうなんだ。」


 亮太の口からこれ以上、他の女の子のことを聞くのが嫌だった。

 だけど、それでも気になって私はただただ亮太の声に耳を向けた。


「・・・今でも好きなんだぜ?」

 
 亮太の声が少し震えた。

 亮太の表情が寂しそうに見えた。

 それだけで私は辛くなる。胸がぎゅーって痛くなる。

 好きじゃないなんて口で言えても、やっぱり心の中で亮太を想ってる・・・。

< 39 / 47 >

この作品をシェア

pagetop