私と君と、あの子。
「ごめん。」


 亮太の目を見て、私はそう答えた。

 答えなんか、最初から決まっていた。

 麻美ちゃんの亮太を奪っちゃいけない。

 
「・・・そっか。」


 亮太の顔が、寂しさで満ち溢れる。

 ・・・そんな顔、しないでよっ。

 私、本当は亮太のこと・・・。


「亮太は、麻美ちゃんと幸せになるべきだよ。」

「・・・なんで優衣にそんなこと分かんだよっ。」

「亮太と幸せになるのは、私じゃない。そんなこと前から、分かってるでしょ?」


 亮太が麻美ちゃんからの告白にOKを出した時から、もう決まってた。

 亮太と幸せになるのは麻美ちゃんだって。

 私は、亮太を諦めなくちゃいけないんだって。


「じゃあ、なんでそんな泣きそうな顔してんだよ。」

「えっ・・・。」

「・・・そんな顔、見たくなんかねえ。」

「・・・・・・。」


 亮太が私に近づいて、私を抱きしめた。

 亮太の温もりが、私を心地よくさせる。

 でも、だめなんだ・・・。

 この温もりも全部、麻美ちゃんのものなんだから。
< 42 / 47 >

この作品をシェア

pagetop