ハッピークライシス
街の地下深くに眠る、旧イタリア国鉄の線路跡。
その昔、軍事的な目的で政府が独自建設したものであり、現在では使用されることなくただ深い闇が続くばかりだ。
小型ライトで先を照らしながら、ユエは身体を引きずるようにして薄暗い路線に沿って歩いていた。
ゴホ、ゴホ、――
喉を生温かい血液が這いあがり、乾いた咳と共に吐き出された。
おそらく、外の世界では太陽が真上に上がり、また新しい一日が始まっているだろう。けれど、一片の光も届かないこの場所では実際今が何時か全く分からなかった。