ハッピークライシス
―血を流し過ぎたな。
朦朧とする意識をなんとか奮い起させながら、未だに血の止まらない傷口を見下ろす。
さすがに、この場所についてはレヴェンも嗅ぎつけなかったようで、追手が来る気配もない。
ようやく、ライトがひとつの旧車両を照らした。
設置された鉄製の階段をのぼり、車両の扉を開けて中へと入る。
ランプに火を灯し、ようやく一息ついた。
身体が鉛のように重く、もしこの場所まで追われていれば流石に命はなかっただろう。ユエは、ゆっくりと視線だけを動かす。小さな息遣い、人の気配がした。
「なんだ。まだいたのか、お前」