ハッピークライシス
「最初の乾杯で壇上に立ったのが一人目、今会場で各人に挨拶をしているのが二人目だ」
「どうしてわかったの」
「マッシモに似せる為に声帯を人工的にいじっているな。二人共ビブラートに違和感がある。後は、与えられた情報を語る時に出る、微表情の変化。コンタクトレンズの装着有無。細かな部分について見ていけば違いは分かる」
ごくりと息を呑む彼女に忠告する。
「一筋縄じゃいかない」
「……余計なお世話よ」
「家族の心配をするのは、当たり前だろう」
「飽きたらなんだって捨てるくせに、そういうこと簡単に言わないで」
「折角有益な情報を教えてあげたっていうのに、なぜ怒るんだ?」
明らかに苛立った様子のシホに、ユエは心底理解出来ないと眉を寄せる。