ハッピークライシス
―…気持ち悪い。
口元を押さえながらゆっくりと起き上がる。
ふと辺りを見渡せば、そこは間違いなく自分の部屋。ユエは思わず首を傾げた。
「シホ」
「あんた、昨日いつの間にひとりで帰ってたわけ」
「…?」
「シンシア、激怒りしてたわよ。どうせユエのことだから、会場で女に誘われてそのままどっかのホテルに行ったに違いないって………、あながち間違いじゃないみたいね。呆れた」
シホは、心底嫌そうに眉をよせ、人差し指でユエの首筋をなぞる。
はっとして指差された場所を見れば、そこには強く噛み付かれた痕が残っていた。傷は、まだ乾いておらず、うっすらと血が滲んでいる。