ハッピークライシス




(奪われた?また妙な言い回しだ)



―けれど、シンシアが知っていることについては、当然か。

シホは、かの有名なレヴェンファミリーから仕事を請け負っているのだ。

伝統と格式、そしてイタリアの地を統べる強大な権力を持つコーサ·ノストラ·レヴェンからは、間違いなく法外な報酬が払われている。

底知れぬ深い闇の世界で、その統治者たるレヴェンが無名に近い彼女を雇うことについては、おそらくシンシアからの口利きがあったに違いない。

この仕事が上手く行かなければ、殺されはしないまでもそれなりの代償は払わなければならないだろう。

シホと繋がりがあるシンシアも同様に。

けれど逆に、ここでレヴェンのお墨付きがつけば、この世界で絶大な信頼を得ることが出来るのだ。



「無茶な賭けだ、シンシア」



最果ての地で、ユエにとって二人は仄暗い環境を共に生きてきた家族と呼ぶべき存在だ(…というと、シホもシンシアも怒るが)。

レヴェンの後ろ盾を与えようとは、シンシアもシンシアでシホのことが心配なのである。


(まあ、そんなことを言えば、プライドの高いシホは反発するに決まっているから絶対に教えることは出来ないな)


ユエは、小さく笑みを浮かべた。
< 49 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop