ハッピークライシス









元々は古城であったものに改築を施したという過去もあり、ヘイスラーホテルは古典的でありかつモダンな造りとなっていた。
高級車が何台も出入りし、従業員が丁寧にドアを開けるというのが繰り返されている。

一歩エントランスに踏み入れれば、大理石の床に真紅の絨毯が敷かれていてふわりと足が沈んだ。


(…こんな場所を指定するとは、さすがレヴェンといったところか)


アテンダントに案内され、地下のバーへと降りる。
照度の下げられた落ち着いた雰囲気の店は、どうやら会員制らしい。


「…シンシア=イオハルトという人物と待ち合わせをしている」


そう告げれば、オーナーはその瞳に畏怖を浮かばせた後、恭しく頭を下げた。
案内されたカウンターは他の席とはひとつの扉で隔離された場所にあった。
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