ハッピークライシス
カッとシンシアの頭に血が昇る。
咄嗟に、手に持っていたグラスをユエにぶっ掛けていた。
避けることだって出来たはずのそれを、ユエは真正面から浴びる。ぽたぽたと頬を落ちるヘネシーを指先ですくい、ぺろりと舐めた。
「頭を冷やせ。レヴェンを敵にまわす気か。…シホも、この件には深く関わっている。もしお前があの子供に手を出すなら、俺達はお前を殺さなければならなくなる」
「…それは、出来れば避けたいな」
「ユエ」
「なんだ?シンシア」
「……シホは、いつも不安に思ってる」
「俺も不安だよ。欲望に内から食い破られそうで。どうしてこうなってしまったのか、自分でも理由が分からないんだ」