ハッピークライシス
シホは、太股にホルスターを巻き、脱ぎ捨てられたドレスを纏い、動きやすい革のブーツを履いて寝静まる街へと飛び出した。
裏路地を駆けながら、シンシアの携帯に連絡をする。
『pronto(もしもし)』
「青薔薇が、屋敷に向かっている」
『…なんだと?シホ、今どこだ!?』
「ユエとアパルトマンに一緒にいた。ごめんなさい、シンシア。殺すべきだと分かっていたわ」
『………俺達もすぐに向かう。いいか、シホ。レヴェンは、報復を決定した。フィリップ=フェデリコが持つ全ての資財をレヴェンで押さえる。青薔薇がそれに手を出すということは、レヴェンの所有物を奪うことだ』
「わかっている」
『屋敷近辺で待機している構成員5人にも連絡する。確実に、フィリップの息の根を止めろ』
ぶつりと通話が切れた。
息を呑んで、携帯をポケットへとしまう。心臓がドクドクと脈打つ。いつもは、驚くくらい冷静になれるのに。