雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
「オレが嫌いなら、それでかまわない。だが、今度だけはオレのいう事を聞いてくれ。いいな」


 祈りにも似たロイドの懇願に、意外にもユイは少し笑って答えた。


「何度も言わなくてもわかってるわよ。それに、あなたの事、嫌いじゃないわ」


 ロイドは思わず目を見張る。
 我が目と耳を疑いたくなった。

 この控えめな笑顔は演技ではない。
 間違いなく自分に向けられている。
 そして、心底嫌われていると思っていたのに、ユイは嫌いじゃないと確かに言った。

 好きだと言われたわけではない。
 マイナスがゼロに変わっただけだ。
 たったそれだけで、舞い上がりそうなほど嬉しくて、知らず知らずに顔がほころんだ。
 そして思考回路は完全に麻痺した。

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