雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

「そんな事言われてたまるか」(1)

 ローザンが研究室にやって来て、いつもの日常が始まった。

 ロイドは入口横の工具置き場から、大きなスパナとドライバーを手に取り、メインコンピュータの前に座るローザンの元へ行った。

 彼に指示を与えた後、広域人物捜索装置の裏に回る。
 そして基盤が取り付けてある部分を塞いでいる、側面の六角ボルトを外し始めた。

 ユイは感心な事に、ロイドが忠告した翌日から、いう事を聞いて研究室にいる。

 今日も窓辺に置かれた椅子に座り、ひざの上に絵本を広げた。
 時々厨房にお菓子を作りに行く以外は、そこが彼女の定位置となっていた。

 先ほどのやり取りから、ロイドの想いに感付かれたかと思ったが、ユイの様子はいつもと変わりない。
 十日も経てば大体分かってきたが、ユイはかなりニブイ。

 嫌いじゃないと言われて見方を変えてから、分かった事もある。

 ロイドが触ると激しく抵抗したり、真っ赤になって怒ったりするのは、照れくさいからのようだ。

 その証拠に、そんな時のユイはいつもドキドキしている。

 あの夜になぜ泣いたのかは不明だが、最近はキスをしても、怯えたり突き飛ばしたりはしなくなった。

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