雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
 積極的に応えてくれたりはしないが、メガネを外して顔を近づけると、観念したように目を閉じて受け入れてくれる。

 すぐ顔に出るユイは分かりやすい。
 自分に対して少なからず好意を抱いていると思うのは、自惚れではないはずだ。

 だがこちらの好意は、微塵も伝わっていないのが、なんだか虚しい。


(どうしてキスするの? って、おまえが好きだからに決まってるだろう!)


 最初は好奇心だった事など、すっかり棚に上げてロイドは憤る。

 反面、少しホッとしたりもしていた。

 今はまだ、広域人物捜索装置の誤動作の原因が分かっていない。
 そのため、ユイをニッポンに帰す方法も、ニッポンから呼び寄せる方法も、見当がつかない。

 帰す方法が分かれば、ユイはニッポンに帰ってしまう。
 そして、こちらに呼び寄せる方法が分からない限り、二度とこちらにはやって来ない。
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