雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

「そんな事言われてたまるか」(2)


 午後になり、三人が研究室に顔を揃え、午前と同じ場所に陣取った直後、扉がノックされた。

 ラクロット氏が顔を出し、ユイにジレット嬢の来客を告げる。

 ユイは絵本を置いて席を立った。


「最近よくお見えになるな」


 ロイドが顔を上げてつぶやくと、ユイは楽しそうに答えた。


「うん。退屈だから、どんどん遊びに来てって頼んだの。ジレットって、かわいいし、やっぱ女同士でおしゃべりするのって楽しいのよね」


 ユイは未だに殿下としての自覚に欠けている。
 研究室に閉じこもっていて退屈なのは分かるが、外部の人間と頻繁に接触するのはまずい。
 特にジレット嬢は殿下にとって特別な方だ。

 ロイドは真顔でユイを見つめた。

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